■沖→千話
■労咳を患っていることを知り荒んだ気持ちの沖田さんの気持ちを綴ったものです


本当に腹が立つ……

「次!」

僕は防具もなしに隊士たちに稽古をつけていた。
もう何人と打ち合ったのかわからない。
だけど僕の体は全く疲れていなかった。

だって、皆、弱すぎるんだもの……

「打ち込みが甘い!なんのつもり?僕をからかってるの?」

ふざけないでよ、毎日何やってるの?
もう何度となく、同じことを心の中で呟いた。
剣術指南の時間も与えてあるのに、この有様。

本当、嫌になる……

「次!」
「お願いします!うをぉぉぉぉっ!」

気合いだけは十分なようだけど……

「うあっ!」

隙を突いて右手首を狙った。
ガラン……と隊士の手から木刀が落ちる。

この人も弱い……

「真正面から馬鹿正直に打ち込まない!剣筋思いっきりばれてる……次の人!」

「なぁ、今日はえらく気合いが入ってるっていうか……」
「いや、八つ当たりに近いだろ?急に集合かけて打ち込んでこい、なんてよ……」

僕のことを言ってるんだろう、平隊士の声が耳に届く。
まぁ、そんな口、すぐに聞けないようにしてあげる……

平隊士はもう誰も向かってこなかった。
情けないことに、皆好き勝手な方向を向いて横たわっている。
荒い呼吸音しか聞こえなくなった稽古場。一人、木刀を構える。
すると、決まってやってくるのは土方さんだった。

「総司!お前、こんなに隊士たちをボロボロにしてどうする気だ!巡察もままならないだろうが」

ほらね。

「この人たちが、弱すぎるんですよ。僕は悪くないと思いますけど」
「……くそっ!てめぇが強すぎるんだろうが!」

土方さんは決まってその言葉を口にする。
僕は本気で仕合ってもないですけどね、なんて言うとまた土方さんは怒鳴るから言わないでおいた。

だって僕にはもう時間がないんだ……
少しでも近藤さんの側にいる人には強くなってもらわないといけない
それが、近藤さんのためにもなる

「じゃあ僕、顔洗ってきますから」
そう言って土方さんにヒラリと手を振って、僕は当てもなく歩き出した。
とは言っても大抵壬生寺の石段に腰をかけて、ぼうっと日を眺めるのが僕の習慣になりつつあったけど。

「……これって労咳のせいなのかなぁ?」

以前より、息が上がりやすくなったような気がしていた。
気のせいだと思いたいけど……

「あ、あの……沖田さん」

いつも聞いてる居候の声、千鶴ちゃんだった。
声のした方に目をやると、心配そうに僕を見つめる彼女の視線にぶつかった。

「あまり激しい隊務は控えた――」
「君にそんなこと言われる筋合い、ないんだけどな……」
「でも、お体に……」

本当に鬱陶しい子だな……
千鶴ちゃんの、そのお喋りな口を右手で塞いでやった。

「少し、黙っててくれないかな」

僕は僕のやりたいようにやらせてもらう
君は君で、僕に構うより他にやるべきことがあるんじゃないの?

本当に腹が立つ……

君の、何気ないその行動が僕を苦しめている

そんな目で僕を見ないで。僕に構わないで。どうせなら出会いたくなかった

来世、なんてものがあるのなら――